極上スイートキス~イケメンCEOと秘密のコンシェルジュ~
「ここの合宿所は高地できついけど、この星が見られるから毎年頑張れたな」
嬉しそうに紘平は星を見つめている。
見たことない顔に、どきどきしていた。
「私もです……」
「篠田たちは、あと二回この星を見られるのか」
まもなく引退する自分には、これは最後の景色だと、紘平は意図していた。
「……先輩たちがいなくなるなんて、まだ実感わきません」
「俺もだよ」
夜になって涼しくなった風に、髪をなびかせながら紘平は言った。
「まだずっと、飛んでいられる気がしてたのに、あっという間だった」
初めて見る表情だった。
部活中はいつも凛としていて、みんなを率いている部長の姿しか見たことがない。
けれど今は、素直な胸のうちを語っているようだった。
声のトーンも表情もどこか柔らかい。
みのりは吸い込まれるようにその横顔を見つめる。
気持ちを、言ってしまいたい。
そんな衝動を駆られた。
「篠田は、後悔はないか」
「えっ……」
気持ちを見透かされたのではと、どきりとしてしまう。
「この合宿で、やり残したことはないか」
もちろんそれは、ハードルのことだろう。
けれどどうしても、紘平のことを意識してしまう。
「あ……あります」
顔を上げて見つめ返すと、そこには優しい紘平の瞳があった。
それは、この気持ちを伝えること。
お互いの間に、一瞬独特の空気が流れた。
静かすぎて心臓の音が聞こえてしまいそうだった。
この時間がずっと続いてほしい。
そう願ったとき、紘平がゆっくりと唇を開けた。
「……篠田」
「は……はい」
そっとみのりの肩に、紘平の手が乗った。