極上スイートキス~イケメンCEOと秘密のコンシェルジュ~
思えば、紘平は陸上をしていたときもケガに悩まされていた。
それはみのり自身がケガを負い整形外科に通っていたとき、偶然に紘平と会ったことで知った。
「怪我のことは、だれにも言わないでくれ」
その時、紘平にそう口留めされたのを覚えている。
そして、みのりはそれを守った。
周りの人間は、紘平が病院に行っていることなど知らなかっただろう。
むしろ、いつも記録を出すことが当たり前のように思っていたはずだ。
けれど本当は、見えない場所でもがいていたことを、みのりだけは知っていた。
「いつもそうやって、一人で戦っているんですね……」
たくさんの人に囲まれ、慕われ、チームをまとめ上げていた紘平は、本当は大きな責任を背負い、戦っていた。
そんな苦労をおくびにも出さずに。
紘平はそのときから変わりなく、今も戦っている。
昔と変わらない彼らしい姿に、胸が熱くなる。
「……そういうところが、昔から好きです」
好きになった人の尊敬できる部分が、今も変わらずそこにある。
そのことが愛しくて、そして嬉しかった。
眠っている紘平に小声で告げると、みのりは握った手を自分の頬に寄せ、静かに紘平に付き添った。