極上スイートキス~イケメンCEOと秘密のコンシェルジュ~


 ■

 揺れる指先に気が付いて目が覚めた。

 一瞬、きゅっと握りしめられたような。

 暖かな感覚。


「あ……」

 顔を上げると、紘平がぼんやりとみのりを見つめていた。

「……先輩っ」

 顔の近さと、いつの間にか眠ってしまった自分に、恥ずかしさがこみあげる。


「俺……あの時、倒れて…ああ、そうか」

 紘平は、ひとつひとつ思い出すようにつぶやき、状況を理解した様子だった。

「具合はどうですか……あっ」

 しっかりと握られていた指先に気付いて、慌ててしまう。

「……付き添ってくれてたんだな、ありがとう」

 紘平はその手を離すこともせずに、ゆったりとした笑顔を浮かべた。

 繋いでいたい、そんな気持ちから、みのりもそのまま握り返す。


「はい、司さんは仕事のためにホテルに戻りました」

「そうか……借りが出来たな」

 天井を見つめ小声でそう言うと、静かにみのりへと視線を向ける。


「篠田にも」

「いえ、私は何も……ここにいただけです」

「それが一番嬉しい」

 紘平の声が優しく響く。

 繋がれたままの手を口元へ持っていかれ、わずかにキスを落とされた気がした。


「目が覚めて、篠田がいてくれてほっとした」

「先輩……」

 思いがけない言葉に、胸がきゅっと鳴る。


 私でいいんですか、と心の中で囁いた。


「リーダーが倒れてちゃ話にならないな」

 苦笑を浮かべる紘平に、みのりは首を振る。

「いえ、それだけ頑張っていたってことです。しかも、かなり無理をしていたんですよ」

「そうかもしれないけど、結果を出さないとな……つ」

 そう言って体を起こした紘平は、まだ頭痛が残るのか頭を抑えた。



< 51 / 93 >

この作品をシェア

pagetop