極上スイートキス~イケメンCEOと秘密のコンシェルジュ~


「先輩、だめですよ、安静にしないと」

「もう充分、休んだ」

「だめです、また倒れちゃいますよ」

 半身をベッドから出し、靴を履こうとする紘平を必死で支える。


「もう大丈夫だから」
「だめです」

 立ち上がろうとする紘平の腕を掴み、制止を試みる。

「先輩……っ」

 力づくでは敵わないと分かりながら、必死で紘平を抑える。

 その時、紘平の腕がふわりと浮いて、みのりを抱き締めた。


「……先輩」

 抱き締められ、思わず力が抜けた。

「……頼むから」

 紘平の唇が、みのりの耳元で震える。

 耳奥に響く掠れた声に、鼓動が速くなった。


「頼むから行かせてくれ」



 あの時と同じだ。

 かつて怪我のことを内緒にしておいてくれと頼んだ時と、同じ。

 覚悟を持った目だった。
 
 あの時も、頷くしかなかった。
 
 けれど、何かあったらすぐに支えよう。
 
 そう決心して、紘平との秘密を守ってきた。
 

 この人は変わらない。
 
 そしてそんな彼に惹かれる自分も。


「……わかりました」

 抱き締められたまま、みのりは小さく頷いた。


「その代わり、この仕事が終わるまで先輩のこと支えさせてください」

「……それは頼もしいな」

 くすっと間近で微笑まれ、頬が熱くなる。


「そばにいてくれ」

 それは、仕事が終わるまで、という意味のはず。
 
 しかし、その言葉に深い意味があるような気がして、落ち着かなくなる。


 紘平が望むなら、ずっとそばにいたい。


 再び灯った恋心をもう無視できない。
 

 みのりは腕の中で返事をした。




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