極上スイートキス~イケメンCEOと秘密のコンシェルジュ~
変わらない想い
「ラスト1本! 終わったら各種目メニューに移って」
トラックに紘平の声が響く。
部員たちは手拍子を合図に、次々とトラックを駆けていった。
みのりの番が来る。
合図とともにスタートすると、初夏の空気を体にまとう。
走っていると、澄んだ青空に吸い込まれていきそうな感覚になった。
「みのり、ハードル出しにいこ」
同じ種目の成実に言われ道具倉庫に移動した。
「今日も暑くなりそうだね、合宿3日目にして私バテそう」
国体予選に向けて、強化合宿は半ばに差しかかかっていた。
自然豊かな地方の山奥での合宿所を貸し切ってのトレーニングに、少しずつ音を上げてくる者も出始める。
「去年より暑い気がするー、猛暑なのかな」
大学2年になったみのりたちは、この合宿は今年で2回目だった。
「山っていっても盆地だからね、昼間はやっぱり暑いよね」
パタパタとTシャツで自分を扇ぎながらみのりは言った。
成美とみのりは、中学、高校は別々だったが、お互いの存在はずっと知っていた。
陸上競技会で必ず決勝で顔を合わせていたからだ。
同じハードル走者のライバルたちは、大学で初めて言葉を交わすと、すぐに仲良くなった。
お互い励まし合いながらトレーニングしてきて、自然と親友となった。
今や、お互いの恋愛事情まですべて把握している。
「あ、伊崎部長が飛ぶ」