極上スイートキス~イケメンCEOと秘密のコンシェルジュ~
一瞬の油断
■
海沿いに佇むチャペルが、きらきらと光を放つ。
ホテル敷地内にあるチャペルは、昼間はその海の景観、夜はイルミネーションで通年予約でいっぱいだ。
「あれ、チーフ、休憩ですか」
「うん、ちょっとね」
カフェのスタッフもだいたい顔見知りだ。
とはいえ、みのりがここに来るのは珍しい。
少し時を作り、休憩に入ったみのりはホテル内のカフェから、その景色を眺めていた。
今日も結婚式が行われていた。
中庭では着飾った若者たちが、二次会を中庭で楽しんでいるのが見える。
少し、気持ちを落ち着けたかった。
ここ数日で、紘平への気持ちが盛り上がっていたが、ユリナに会ってそれが少し萎んでいくのを感じていた。
紘平への気持ちは変わらない。
けれど。
「私が知ってるのは大学時代の先輩だけ…」
今の紘平のことは何も知らない。
夢見る時間は終わったと言われているようで、みのりは複雑な気持ちを抱えていた。
何度目かの溜息をこぼしたとき、耳に掛けていたインカムが鳴った。
「はい」
『篠田さん、フロントの駒沢です。お客様から篠田さんに連絡がありました』
「わかりました、すぐ伺います」
立ち上がりながらお客様の部屋番号と名前を聞いて、一瞬戸惑った。
『エグゼクティブフロアに宿泊の、相沢司さまです』