極上スイートキス~イケメンCEOと秘密のコンシェルジュ~
成美の言葉にみのりがどきりとする。
トラックの脇をハードルを運びながらいくと、高跳びのウォームアップが目に入った。
弧を描くような助走のあと、紘平が軽やかにバーを超えていく。
そのしなやかで美しい姿に、思わず釘付けになる。
いつも通り、人を惹きつける、無駄のないフォーム。
長くすらりとした手足がバーを越えていく姿は、空を泳ぐ鳥のようで自由。そして力強くもあった。
そして飛び終えたときの涼やかな笑顔が、そこにいる女性たちの心を奪う。
このジャンプをそば見られて幸せだとみのりは思う。
高校時代も、すごいハイジャンプの選手がいると噂は聞いていたけれど、まさか大学で会えるとは思っていなかった。
種目こそ違えど、みのりにとって紘平は、あのジャンプのように高く憧れの存在だった。
「国体でもいいとこいくんじゃない、部長」
「そうだね」なるべく他意を込めない返事をしたつもりだったが、
「そうじゃないと困っちゃうよね」
成美はたっぷりと意味を込めた笑顔を浮かべた。
「だって部長が負けたらそこで引退でしょ? なるべく勝ち進んで長くいてもらわないと、誰かさんのやる気がなくなっちゃうんじゃないの」
「なっ、何言ってるの!」
思わず頬が熱くなる。でも図星だ。
紘平となるべく長く一緒にいたい。
そのためには紘平に勝ち進んでいき、1日でも長く陸上部にいることの外に方法がない。