極上スイートキス~イケメンCEOと秘密のコンシェルジュ~
■
心の奥にある、じめっとした気持ちを振り切ろうと、走り続けた。
ぶつかるような勢いで開ける、重たい扉。
そこはホテル内のチャペルだった。
今の時間は誰にもリザーブされていなかったため、中はしんとしていた。
祭壇と続く通路を歩いて行く。
本気で走ってきたせいか、息が上がっていた。
「篠田…っ」
「……!」
背後で重たい音がする。
入って来たのは、みのりを追って来た紘平だった。
彼もまた本気で追いかけて来たらしい。
「…相変わらず速いな」
大学時代はハードラーのみのりだが、リレーの控えには選ばれるくらいの記録を持っていた。
みのりに近付いてくる息が上がっている。
「どうして来たんですか」
「え?」
「どうして私を追うんですか」
「篠田…」
そばに来た紘平は、みのりを見つめる
けど、それを遮るように紘平に背を向けた。
「ユリナさんがいるのに…」
「篠田、こっち向いて」
「……」
「篠田」
「…っ」
肩を掴まれ、強引に彼の方へと向かされる。
向き合ったみのりの瞳は潤んでいた。
「聞いて欲しいことがある」
聞きたくない、とみのりはすぐには頷けなかった。
「…ユリナは、俺のフィアンセだ」
核心に触れる言葉。
みのりは心の奥に、鉛が落ちた気がした。