bittersweet
久美にがんばりなよと肩を叩かれ、1人になった私はとりあえずバス待合所のベンチに座り携帯を鳴らした。

吉岡くんがワンコールででた。

「やっとつながった。この間のことちゃんと話したくて。これから会えない?」

吉岡くんからそう誘ってくれた。

「うん、私も話したいことあるから・・・」

大通りをちょっと外れたところにある小さな公園で待ち合わせる。

吉岡くんはすぐにやってきた。

「さっき会社の方まで行ってさ。スーツの眼鏡の人に琴美ちゃんのこと聞いたらもう帰ったって言うから」

きっと高田さんだ・・・。またからかわれるな。

それにしてもわざわざ会社まで行ってくれたなんてと思うと胸が熱くなった。

「オレさ。普通の感覚が麻痺してたっていうか・・・あいさつでもあんなことしたらダメだよな。ほんとごめんっ」

素直に謝ってくれる。

もしかしたら・・・もしかしたら・・・よし!伝えるなら今だ。

「私、吉岡くんのこと好き・・・だからあの時ショックだったんだ。あんまりに簡単に・・・その・・・」

もごもごしながら伝えた。やった!言ったよ!

吉岡くんがどんな顔して聞いているのか恥ずかしくて見れない・・・・

でも吉岡くんはさして動揺もしてない口調で答えた。

「じゃあさ。付き合っちゃおうよ」

「え?」

あまりの軽さに言葉をなくす。

「キスしちゃった責任もあるしさ。まぁバイト忙しくてなかなか会えないけど」
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