bittersweet
「あれ?向こうから歩いてくるの吉岡くんじゃない?」

ファミレスを出て駅前通りを久美と2人で歩いているとき久美が言った。

向こうから派手めな女の子と腕を組みながら歩いてくるのはたしかに吉岡くんだ。

「あ、ほんとだ」

胸がズキッとなる。なんだろう。ヤバイ。

「あれ?琴美ちゃん久美ちゃん」

吉岡くんが気づいて声をかけてきた。

「こんばんは」

なんかへんな感じでよろよろとあいさつをする私。明らかに挙動不審だ。

「吉岡くんはデート?」

久美がさらっと聞く。

「オレはこれからバイト。今日は同伴なんだ」

隣の女の子は明らかに私たちを睨んでる。

「じゃあまたね」

とすれ違う。

・・・誰あの子達・・・。んー、友達の彼女とその友達・・・

そんな会話が背後から聞こえてきた。

「へぇ同伴なんてあるんだね」

久美が言う。

私は返事ができなかった。思った以上に動揺してる自分に驚いてる。

「琴美?」

久美が心配そうに顔を覗き込んだ。

「う、うん。大丈夫」

何が大丈夫なのか私はやっと返事をした。

「琴美・・・。やっぱり合コンなんか誘わなきゃよかったね」

久美がしょんぼりする。

「ううん。別に私吉岡くんのことなんとも思ってないから。ただちょっと同伴とか私の知らない世界過ぎて驚いただけ」

あわてて久美に言い訳になってない言い訳をした。
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