bittersweet

変化

「なんかさぁ。牧野最近きれいになったよな」

自分のデスクで伝票整理をしていると営業の高田さんが声をかけてきた。

26歳独身。眼鏡で細身。どこにでもいるような普通の男の人。

入社当初からよく面倒を見てくれてたまにご飯にも連れて行ってくれる。そして仕事のグチや中距離恋愛中の彼女のグチなど聞かされる。

「男でもできた?」

ニヤニヤしながら聞いてきた。

「できてません」

そっけなく私は答える。

「ほんとかなぁ。今度ゆっくりじっくり話し聞かせてよ」

高田さんはひらひらと手を振って「じゃ行ってくる」と営業に向かってった。

たしかに最近私は変わった。ファッション雑誌を買うようになったし、服もジャスコやユニクロで買うのを辞めた。

化粧品もスーパーで980円で売ってるファンデから久美が使ってるプラウディアに変えてみた。

吉岡くんからはあいかわらず2日に1度はメールが来る

仕事どう?とか今何してる?とか他愛のない内容。

一体何を考えてるんだろう・・・

まだ一度もどこにも誘われたわけでもないのに私は何か期待してる。

ほんとにどうかしてる。あんな場面を見かけたって言うのに・・・

ふぅと息をつくとデスクの端にいつも置いてる私の携帯がブルブルっと震えた。

メールだ。

「今日仕事何時に終わるの?時間空いたから一緒にお茶でもしよう」

携帯を手にして私は固まる。

それがいつもの久美からのメールじゃなくて吉岡くんからのメールだったから。
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