只今上司がデレデレちゅぅ！！〜溺愛上司に愛されて〜

時間と会話

悠哉が車で美羽を連れてきたのは期間限定で開催している植物の展覧会。

看板を見るだけで美羽は目をキラキラ輝かせていた。

「どうしてここに？」

自分の後ろに立つ悠哉に話しかける。

悠哉はせき込んで答えた。

「まあ、何と言うか…。参考に？」

何も思いつかなかったのか、そう言った後に悠哉は少しへこんでいた。

「私、植物が大好きなんです。独学で研究も実はしてて…、植物に興味を持ったのはマジックドリーム社が切欠なんです」
「そうだったんだ…喜んでもらえてるようで良かったよ」

そう言って２人は展覧会会場に入って行った。

「ここで待ってて」

悠哉は美羽にそう告げて１人受付に行った。

美羽の元に戻って来た時には２枚のチケットを持っていた。

「え、いいですか」

美羽は戸惑いながら聞いた。

「うん、俺が今日は誘ったし」

悠哉はまた美羽の手を引いて順路に入って行った。

中には沢山の花や草木があり、立て札には細かく説明が書かれていた。

美羽はゆっくりじっくりと１つずつ観察していく。

夏に開催されていても一人だと勇気が出なくて来れなかった展覧会。

楽しそうな美羽を見て悠哉は微笑んでいた。

一度休憩所になっている中庭に２人は出て空いているベンチに座った。

「そう言えば、研究って何してるの？」
「研究と言えるほどの実験とかはしてないんですけど…生態を調べたり、花や草木が生えている土を細かく調べたりしてました。今は…それをレポートにしてまとめてる最中です」

植物の事になると目の色が変わる美羽の話を聞いてくれるのは大学の先生か桃歌だけだった。

美羽は珍しくウキウキしていた。

「それってどこかに送ったりとかしないの？」
「しませんね、私は誰かに認めてもらいたくてやってるわけではありませんので」
「…出来たら、俺に見せてくれる？」
「できるまで時間かかりますけど…いいですか？」
「もちろんだよ、待ってる！」

美羽と悠哉は今日１日で沢山話した。

美羽は駅までと言ったが、悠哉は美羽を美羽の家まで送った。

「今日はありがとうございました。またいつかお礼します」
「いいよ、それよりちゃんと寝てね柊木さん」
「…はい、努力します」

美羽は悠哉の車が見えなくなるまで外で見送った。

家の中に入り、展覧会で買った物を広げる。

「…思ったより沢山買ったな」

物の量に自分でも失笑した。

美羽は今日１日で悠哉のことが少し分かった気がした。

その日は興奮が収まらず、結局美羽が眠りについたのは朝方だった。