只今上司がデレデレちゅぅ!!〜溺愛上司に愛されて〜
美羽の目の前で色んなことが起こっている。

自分の父親と上司の挨拶、美塁と美来そして桃歌のちょっとしたじゃれ合い。

美羽はただ呆然と窓の外を見ていた。

「あ、そうでした」

悠哉が何か思い出したように言う。

美羽はハッと我に返り悠哉を見た。

悠哉は咳払いをしてから声を放つ。

「柊木さん、退院したら俺の家に来てください」

辺りが静まり父親、弟、桃歌は瞬きを何度もしていた。

美羽は思考がショートして頭の中真っ白になっていた。

ただ1人悠哉だけが喋り続けていた。

「あ、あれ?」

悠哉はその場にいる人皆が固まっていることに気づいた。

「な…」
「ん?」
「何言うとんじゃわれー!!」

父親が吠え、弟達は美羽の前に陣取る。

さて、ここがどこかお分かりでしょうか…。

はい、病院でございます。

桃歌は驚き、美羽は呆れていた。

「お父さん!落ち着いて、ここは病院だよ」

美羽は父親を宥める。

「美塁も美来も」
「社長、外に出ましょう」

美羽はにっこりと微笑み病室から皆を連れ出した。

美塁に車椅子を押してもらい、6人は中庭に出た。

「…それで社長、どうしてそうなったんですか?」

美羽が話を切り出す。

皆が悠哉と美羽を静かに見守る。

「えっと…柊木さんが今回倒れたのが2回目で、入院もしたから誰かの支えが必要だと考えまして…」

そう言う悠哉は弱々しい物腰。

社長で威張らない悠哉のいいところでもある。

「それだったら、私が…」
「いや、中田さんも中田さんで忙しいから」

桃歌が横入りしたのをすかさず遮った。

「…と、言うわけで柊木さん。上司命令です」

誰も納得しないままその日は解散した。
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