只今上司がデレデレちゅぅ!!〜溺愛上司に愛されて〜
「…。」

ザザー…ザザーン…

今は夏ではない。

ましてや春と言ってもまだ寒い方だ。

「社長は馬鹿なんですか?」
「ん?」

美羽の口から衝動的に出た言葉。

風が強く薄着をしている美羽にはまだ寒かった。

美羽は黙って振り返り車に戻ろうとする。

「あ、待って待って!」

悠哉は美羽の腕を掴み取り止める。

美羽は冷めた目で悠哉を見た。

「話は車で聞きたいんですが…」

何で春先に海なのだろうかと…。

悠哉がまとめてくれた髪も風で荒れまくっていた。

「一度、柊木さんと海に来てみたくて」
「夏に来ればいいじゃないですか」

美羽は家に帰るまでテンションがだだ下がりだった。

暗い部屋の電気をつけると、

「「お誕生日おめでとう」」

目の前にクラッカーを持った桃歌と響輝がいた。

「え、何?」

美羽はカレンダーを改めて見る。

「あ、そうだった」

美羽は日付を見て今日が自分の生まれた日だと気が付いた。

「忘れてたのね、まあ仕方ないわね。はいこれ」

桃歌からは何故か4つリボンのついた袋と箱を貰った。

「何で4つ?」
「私のと、美羽の父親と美塁君と美来君の」

代わりに受け取っていたと桃歌は言った。

「ありがとう」

そして丁度のタイミングで美羽の携帯が鳴る。

「はい、もしもし」
『あ、姉ちゃん?誕生日おっめでとう』
「ありがとう、美塁」
『美羽、おめでとう』
「うん、美来もありがとう」

父親の声は大きくて電話越しにでも泣いているのが分かった。

美羽は電話を切って玄関にずっといる悠哉を見つめた。

すると悠哉は背中に隠していた手を前に出した。

「おめでとう、柊木さん」

悠哉が持っていたそれは…。

「何で知ってるんですか?」

昔に諦めた小さな観葉植物。

「中田さんに聞いたんだ。どうしても君が喜んでくれるものが渡したくて」
「…っありがとう、ございますっ」

美羽は生まれて初めて誕生日プレゼントをもらって涙を流した。
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