只今上司がデレデレちゅぅ!!〜溺愛上司に愛されて〜
定時の鐘が鳴って美羽はデスクを立った。

「桃歌、響輝さん。お先に失礼いたします」
「お疲れ、美羽」
「お疲れ様です柊木さん」

美羽はエレベーターに向かわず社長室に向かう。

社長室の扉をノックすると返事が聞こえた。

「帰りますよ、社長」
「少し待ってくれ。もうすぐで片付く」

美羽は社長室の応接用のソファーに座る。

「よし、終わったよ柊木さん」
「あ、はい」

美羽は勢い良く立ち上がり、足が少しふらついた。

すかさず悠哉は美羽を支える。

「急がなくても大丈夫だよ、美羽さん」

悠哉の息が美羽の耳にかかる。

美羽は顔を赤くして、

「はい、ありがとうございます」

悠哉の方をまともに見ることができなかった。

美羽は俯きながら悠哉の後ろを歩く。

帰りは悠哉の車で家まで行く。

その間の二人の間に会話と言う会話はなかった。

「ただいまー」
「ただ…いま…」

一日ぶりの悠哉の家。

美羽がリビングに入ると観葉植物のせいで圧迫感を覚えた。

「…悠哉さん、私が見ない間にまた増やしました?」
「あ、あはは…」

悠哉は枯れた笑い声を出した。

「お、お茶でも入れようか」

悠哉は逃げるようにキッチンに入る。

「では、私は着替えてきますね」
「うん、分かった」

美羽はリビングを出て自分の部屋に入る。

部屋の扉を閉めて美羽は深い息をついた。

「はぁ~…。面接じゃないのになんか緊張する」

美羽はベッドで一息ついて着替え始めた。

美羽が着替えてリビングに戻ると悠哉もスーツから部屋着に着替えていた。

「あ、お茶入れたよ」
「ありがとうございます…」

美羽は悠哉が座っている席の向かい側に座った。

沈黙が訪れ空気が重く感じる。

悠哉も美羽も緊張しているのか妙に硬かった。
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