××夫婦、溺愛のなれそめ
そのままでと言われても、CEOが来て誰かを紹介するというのに座っているような人はいない。
三人は立ち上がり、私をじっと見つめた。
「先日話したけど、来週から一緒に仕事をしてもらう中岡……じゃないね。もう浅丘莉子だった。僕の妻です。よろしく」
「よ、よろしくお願いいたします」
ぺこりと頭を下げる。
よく考えればこの状況、ほかの秘書さんたちにはとっても面白くないよね。
秘書経験もない私が、たった三か月だけ研修にくるなんて。しかも目的はそのまま一緒に働くためではなく、レヴィの妻として会社やグループのことを肌で感じ、理解するため。
真剣に働いている人にとってみれば、なんてふざけた女だろう、私って。
前の職場でのトラウマもあり、恐る恐る顔を上げた。
案の定、神藤さんと三十代の女性は無表情だった。レヴィの手前、なんとか不快な表情は隠した、といった風情。
「つまんねー仕事増やすんじゃねーよ。なんでCEOの妻の世話までしなきゃならないんだ」とでも思ってるんだろうな。逆の立場なら、私もそう思うだろう。
しかし、二十代の若い女性だけは、可愛らしい顔で花のように微笑んだ。