××夫婦、溺愛のなれそめ
誰も乗り気じゃないことに安堵し、秘書室を後にする。
レヴィに案内された談話室は、秘書室よりも日当たりがいいのか、明るくて温かみを感じた。
三つある丸テーブルのひとつに座ると、閉めたばかりのドアをノックし、真由さんが入ってきた。
その手には二杯のお茶と、他にも何かが載ったお盆が。
「これも、良かったらどうぞ。他の部署の方からお土産をたくさんいただいて」
静かに置かれたプラスチックの器に、高級和菓子がいくつか乗っていた。
「では、ごゆっくり」
真由さんはにこりと可憐に笑うと、舞い踊る花びらのように軽やかに部屋を出ていった。
「可愛いひと」
思わずそんな言葉が口から滑り出ていた。手放しで人を褒めたくなったのは、久しぶりかもしれない。
「うん、そうだね」
レヴィは私の話を聞いているのかいないのか、さっそくお弁当の包みを開けていた。
「あ、そうか」
お弁当は当然、レヴィ一人分しかない。真由さんはバッグの大きさから、そのことを悟って……私がお腹を空かせるだろうと、和菓子を差し入れてくれたというわけか。
お茶を飲んでみる。甘い和菓子に合うようにか、緑茶は少し苦みを感じるくらいの濃さだった。