××夫婦、溺愛のなれそめ
それって、真由さんが教えてくれるってことだよね。
「どうして……」
「え?」
「どうして遠藤さんは、そんなに親切なんですか?」
お盆を持とうとしていた真由さんがぱちくりと瞬きをした。
「親切……でしょうか。同じ職場で働く人ですもの、助け合うのは当然じゃないですか」
助け合うのが当然……。
私はその言葉を聞いてあ然とした。そんなことをさらっと言える人、まだこの世の中に存在していたのか。
「皆さん忙しそうなので、わからないことがあったら、私に何でも聞いてください」
真由さんは小動物のような可愛らしい顔でにこっと笑う。
皆さん忙しそうなので……ってところも、嫌味な響きがない。人の悪口とか言わないのかな、この人。
「ありがとうございます。私持ちますね」
「はい、すみません」
なんだか後ろめたさを感じ、お盆を持った。秘書室に戻ると、まだどれが誰のカップかわかっていな私の代わりに、真由さんがお盆の上からカップをそれぞれの机に置いていく。
「どうぞ」
「ありがとう」
真由さんが笑いかけると、私のことは完全無視だった皆さんがつられたように笑顔になる。