××夫婦、溺愛のなれそめ
「酩酊したか」
デートの途中で軽い自己紹介と、私に何が起きたかを彼に話したような覚えは少しだけ、ある。けれど王子様の名前や彼女にどうやってふられたかという話はしたのかな。まったく覚えていない。
軽い頭痛と、全身の倦怠感。そして腰に感じる重さで悟る。やってしまったな、私。
自らの膝を抱え、そこに額をつけて大きなため息をつく。
自暴自棄になっていたとはいえ、初対面の男の人と……。しかも覚えてないなんて最悪。
ところで、相手はどこに行ったんだろう? そういえば、ここはどこ?
顔を上げると、壁際のサイドボードにもこもこした白い塊を発見。
ベッドから抜け出し、裸のままそれを広げる。白いバスローブだったそれに袖を通し、紐をしっかり結んだ。
耳をすませると、どこからか水音が聞こえてくる。昨夜の王子様がシャワーでも浴びているのかも。
気まずいけれど、仕方ない。昨日脱いだ服がどこにあるかもわからないし、見渡す限り、持っていたバッグもない。彼に聞いてみないと。
ベッドサイドにあったスリッパを引っかけ、のろのろと歩き出す。すると。
ガチャリと音を立てて部屋のドアが開き、驚いて身を固くする。入ってきたのは、同じようなバスローブを着た王子様だった。