××夫婦、溺愛のなれそめ
神藤さんに手招きされ、仕方なく立ち上がる。一旦秘書室を出ると、彼は小声で説明し始めた。
「来客は浅丘誠士様です。浅丘グループ会長の次男で、レヴィ様のお兄様に当たります」
ごくり。自分がつばを飲み込む音が聞こえた。
横を見ると、真由さんもいつもの笑顔をなくし、緊張した表情を可愛い横顔に張り付かせている。
「誠士様とレヴィ様、二人分のお茶とお菓子を。莉子さん、あなたはついでに挨拶しておいた方が良いでしょう」
「は、はい」
レヴィのお兄さんか。どういう人だろう。緊張するな。
浅丘グループの会長はレヴィと私の結婚をあっさり承諾し、婚姻届けを代理の人に出してくれて、そのあと音沙汰がない。
お弁当を作ってくれない、自由なレヴィのお母さんにもまだ会っていないし、その他の親族にも会っていない。
正直、旦那の親族との付き合いって面倒臭そうだし緊張するから、レヴィや会長からオファーがない限り、自分から積極的に関わるのはよそうと思っていた。
レヴィは結婚式や披露宴を半年後くらいにできればいいと思っているみたいだけど、会長のスケジュールが決まってないとかで、日程が全然決まらない。