××夫婦、溺愛のなれそめ
ウエディングドレスは着たいけど、まあ焦ることもないかと思っていた矢先。
まさか親族が自らこちらに乗り込んでこようとは。
いや、私に会いに来るわけじゃなく、ただ仕事の用事で来るだけかもしれないけど。
浅丘一族にすれば、三男坊の結婚相手ってどういう位置づけなのかな。どうでもいいと思ってくれていればいいけど、やたらと家柄や育ちの良さを気にする人だったら嫌だな。
「は~」
給湯室で深いため息を吐くと、真由さんが慰めるように優しい声をかけてくれる。
「大丈夫ですよ。私も誠士さんに会ったことはありませんけど、莉子さんだったらきっとすぐ気に入られますよ」
「はあ?」
「だって、莉子さん綺麗だし。莉子さんが笑えば、男の人はみんなうっとりしちゃいますよ」
それはあなたの話でしょ。私だってね、昔は自分でそう思っていたわよ。
でも違うのよ。男の人も女の人も、意外に中身を見てるの。ううん、感じるのよね。内面の醜さを。
「ちょっと挨拶してすぐ逃げてこよう……」
長い時間一緒にいると、性格の悪さに気づかれてしまう。一際深いため息が出た時、給湯室の扉が開いた。
「お二人とも揃いました。お茶をお願いします」