××夫婦、溺愛のなれそめ

「あ、ごめん俺コーヒーがいいな」

目の前まで来た湯呑を手のひらをかざされ、拒否された。

なん……だと? 急に来ておいて、出されたお茶を拒否し、コーヒーを要求するだと?

隅っこで聞いていた神藤さんが忍者のように迅速に部屋を出ていく。

私は信じられない言葉に固まってしまった。顔に蝋を流されたみたいに、表情が固まっていく。

「失礼いたしました」

それでもかろうじて作り笑顔を保ったまま、湯呑をお盆に戻す。

「兄さん、いつもはお茶じゃないか」

「今日はコーヒーの気分なんだよ」

レヴィは眉根にシワを寄せ、自分の兄をにらむ。

「兄さん、この人が話しておいた僕の妻だ。つまり兄さんの義妹。意地悪はやめてくれないか」

ちゃんと庇ってくれるレヴィに感動しつつ、大人らしく余裕の表情を作りなおす。

「初めまして、莉子です。ご挨拶が遅くなって申し訳ありません」

するとお兄さんはにっと笑って、レヴィに言い放った。

「そう、本当に『申し訳ありません』だよ。身内に黙って籍を入れたお前たちが俺に謝るのは当然だ」

腕と足を組み、偉そうにふんぞり返るお兄さん。

うわあ……こりゃあ強烈キャラだ。私より性格が悪いかもしれない。


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