××夫婦、溺愛のなれそめ
「父さんが決めた期限のせいで時間がなかったんだよ。これからおいおい、ゆっくりやっていく予定だったんだ」
「そういやあったな、そんな期限。まあ俺は余裕で今のパートナーを見つけたけど」
ちらっと私を見たお兄さん。けれどすぐに視線は離れ、レヴィの方へ。
「いいのか、こんな急場しのぎの結婚して。お前、騙されてるんじゃないだろうな?」
普通、それを本人がいる前で口に出す?
ダメだ。このひと、仲良くなれそうにない。って言うか、仲良くしたくない。
退場するタイミングを逃し、お茶を持ったまま突っ立っていると。
「お待たせしてすみませんでした!」
真由さんがコーヒーを運んできた。
緑茶をしのぐ香ばしい香りが部屋に行き渡る。
「ああ、どうも」
お兄さんは真由さんにはにこりと愛想笑いしてみせた。後ろの方から見守る神藤さんの視線を感じる。
気を揉む秘書たちなんて気にせず、マイペースで砂糖とミルクを入れてコーヒーをすするお兄さん。
「うまいな。神藤、お前が淹れたのか」
「いいえ、こちらの遠藤さんが」
「へえ。きみ、いいお嫁さんになりそうだね」