××夫婦、溺愛のなれそめ
性悪義兄の襲来は、不運なことにその後もたびたび起きた。
他のグループ企業の役員をやっているはずなのに、まるで無職の暇人のようにこちらのオフィスにレヴィを訪ねてきては、私にいちゃもんをつけていく。
「この部屋、誰が掃除してるんだ? もちろん一番最近入ったあんただよな。部屋の隅に髪の毛やほこりが残ってる。見えてないのか? もしかして老眼か?」
「おい、瑛士の弁当のクオリティなんとかならないのか。冷凍食品が入っていたぞ。妻たるもの、夫の健康をいつも気遣うべきだろ。しかもお前の夫はその辺の一般人じゃない。この会社のCEOだぞ」
「瑛士、少し痩せたんじゃないか……ろくなもの食わせてもらってないのか」
こんな嫌味は序の口に過ぎない。
性悪義兄はレヴィの前でやたらと私をこきおろし、真由さんを賞賛した。
「きみはいるだけで、世界を平和にするな。きみみたいな子が家にいれば、日頃の疲れなんて吹っ飛ぶだろうに」
「きみみたいな気の利くお嬢さんが義妹だったらよかったのに」
もういいよ……。
さすがの私も、心が折れた。
義兄のせいでストレスが溜まり、そのぶんお通じも滞り、口角炎までできた。痛くて食事をするのも苦痛だ。