××夫婦、溺愛のなれそめ
「わあ……」
新しそうなタオルで髪の毛を拭きながら出てきた王子様の体から、湯気が昇っている。濡れた髪やバスローブからのぞく鎖骨、胸からお腹にかけてついているちょうどいい筋肉に目を奪われる。
まるで美術の教科書に乗っている古代ヨーロッパの彫刻を見ているようで、恥ずかしさや罪悪感はあまり感じなかった。
「起きたんだ、莉子。おはよう」
一晩開けて砕けた口調になった王子様はそう言って私にハグをした。さすがにこれにはドキッとしてしまう。湯上り独特の石鹸の香りにくらりとした。
「お、おはようございます」
「シャワー、使いなよ」
「え、ええ……ありがとう」
そういえば、体中が汗でベタベタしているような気が。シャワーを浴びたいのはやまやまだけど……。
「それより先に、色々とお聞きしたいことが」
私のパンツはどこでしょう……。じゃなくて。えっと、何から話せばいいんだろう。
もごもごしていると、王子様が髪をふく手を止め、ヘーゼルの瞳で私をじっと見つめる。
「もしかして、覚えてない?」
そのもしかです。と素直に言えなくて、曖昧に笑いながら謝る。
「ごめんなさい、相当酔っぱらっていたのか……食事以降の記憶がなくて」