××夫婦、溺愛のなれそめ

浴室から出てリビングに戻ると、キッチンにレヴィが立っていた。かちゃかちゃと食器がこすれる音と水が流れる音が同時に聞こえてくる。

「まさか、お皿洗ってくれてるの?」

キッチンを横からのぞきこむ。普段はほとんど家事をしないレヴィが腕まくりをして食器を洗ってくれていた。

「うん。家にいるときくらいはやらなきゃ」

レヴィはぎこちなく笑い、こちらを向いた。その瞬間、彼の手からつるんとコップが落ちた。

「あ!」

思わず出てしまった私の声を、コップが割れる音がかき消した。コップが落下し、下のお皿を巻き込んで大惨事に。

「しまった!」

青ざめて割れた食器を素手で集めようとするレヴィ。

「もういいよ。私がやるから、レヴィはお風呂行ってきて」

ほら。慣れてないのに気まぐれで手を出したりするから。しかもこんなことでレヴィに怪我をさせたら、また私が嫌味を言われるじゃない。

ゴム手袋をはめてシンクの中を片付け始める。すると、しゅんと眉を下げていたレヴィがぽつりと零した。

「あの……しんどかったら、お弁当は作らなくていいから」

「はい?」

聞き返す声がトゲトゲしくなってしまう。

< 133 / 200 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop