××夫婦、溺愛のなれそめ
『メールじゃわかりにくいな。俺でよければ相談に乗るよ』
相談? 私を捨てた男が何を言う。
『来週までは日本にいるから、いつでも連絡して』
どうしてそんなに親切なの? 私をあっさり切り捨てた罪悪感から?
訝しむ気持ちはもちろんある。でも私は、その誘惑に負けそうになっていた。それはもう、完敗に近い形で。
どこでもいい、浅丘グループから離れたところでまったりしたい。誰かに愚痴を聞いてほしい。
博之にはもう未練も恋愛感情もない。やましく思うことはない。
『美味しいコーヒーが飲めるところがいい』
一日くらい仕事が終わったあとで外出したって、何も言われないだろう。
むしろ、イライラしている私が家にいない方がレヴィもホッとするかも。
『了解。じゃあ明日』
結局、街合わせ場所と時間はさくさく決まってしまった。
「よっしゃ、やっと愚痴れる〜!」
友達が少ない私は、小さくガッツポーズをした。