××夫婦、溺愛のなれそめ
朝食を黙々と食べ始めるレヴィの顔を見ていると、今更ながら罪悪感が募った。
彼がひとりで食事をする姿を思い浮かべると、胸に何かがのしかかってくる。
でも、いいよね、たまには。お弁当もちゃんと作ったし。
私の料理ばかりじゃ飽きるでしょ。今日は神藤さんと外で美味しいものを食べたらいいよ。
ねえ、レヴィ。お互いにひとりの時間は必要だよね……。
頭に浮かんでくるセリフは言わなくていいような気がして、結局黙っていた。
静かな朝食の時間はあっという間に過ぎていった。
出勤した秘書室は、仕事中なので静かとはいえ、電話が鳴る音がたびたび沈黙を破る。
「こっちの方が楽かも……」
今日は例の義兄も来ない。集中できる状況ならば、仕事をしていた方が楽かも。ふと天井を仰いだ。
初めてこんなことを思ったな……。
レヴィといると感情が左右されすぎて、疲れる。家で二人きりでいることがしんどい。
そして、そんなときに限って神藤さんは来ない。
「何か言いましたか?」
ぼそりと独り言を漏らした私を眼鏡の奥の目でにらむように見る神藤さん。
「いいえ、何も」
首を横に振り、視線をパソコンに戻した。