××夫婦、溺愛のなれそめ
逃げるように会社を後にし、博之との待ち合わせ場所に向かった。
前の勤め先と今の会社のちょうど中間地点にあるカフェは、会社帰りのOLや大学生でにぎわいつつあった。
店の中に入り、キョロキョロと辺りを見回す。博之の姿を探すのだけど、なかなか見つけられない。
私の方が先に着いたのかな。店員さんが近づいてきて、私を席に案内しようとした。そのとき。
「おい、こっちだよ」
すぐそばから聞き覚えのある声が。
そちらを見ると、ノートパソコンを開いているスーツの男性が。
「博之」
……と呼びかけてみるものの。
この人、こんな顔だったっけ。
思わず首を傾げた。いかに私が博之という人間をしっかり見ていなかったかという証明になってしまう。
どちらかというと整った顔立ち。髪型も大きくは変わっていない。だけど、頭の中にぼんやり残っていたイメージと合致するには少し時間がかかった。
彼のテーブル越しに向かいあって座ると、店員がオーダーを取りに来たのでコーヒーとサンドイッチを注文した。
仕事の後なのでお腹が空いている。
博之はパソコンをしまい、カレードリアを注文した。