××夫婦、溺愛のなれそめ
「また会えると思ってなかった」
私はジャケットを脱ぎ、頬杖をついて博之を見つめた。自分の元カレの顔を、再確認するように。
「あの時は悪かったよ。なかなか言い出せなくて」
「だからって、あんなタイミングで。逃げるようにして」
今更復縁したいというような気持ちはさらさらないけれど、嫌味を言わずにはいられない。あのときの衝撃がどれほどのものだったか、教えてやりたいわ。
社内恋愛だったから、一気に会社にいづらくなっちゃったしさ。
「ごめんなさい。でも、俺はああして良かったと思ってる。莉子が俺を愛してないってわかっているのに結婚したら、お互いに不幸になっていた」
博之はすまなさそうな顔で、眉を下げて私を見た。
「どうして私があなたを愛していないなんて言えるの?」
たしかにそうだったかもしれないけど、決して嫌いではなかった。粗末にした覚えはないのだけど、博之はどうして自分が愛されていないと気付いたのか。
「顔だよ。綺麗でよくできたロボットみたいだから。最初は美人ってだけで楽しかったけど、長く一緒にいると気づくんだ。笑い方が自然じゃないし、感情もないみたいで、正直怖かった」