××夫婦、溺愛のなれそめ

コーヒーをすすりながら、目を伏せる博之。私も自分の前に置かれたコーヒーのカップを持った。けど、なかなか口を付ける気になれない。

頭の中で博之の言葉を反芻する。

そうだったかも。条件の良い相手を見つけた。逃がさないように、いつも機嫌よく笑顔で接することに努めていた。

それはちょっとした不満や怒りの感情を押し殺し、作り笑顔をしていたということだ。会社にいるときと同じように。

そして、ふと気づく。

私最近、レヴィに対してもそうじゃないだろうか?

ケンカになるのが嫌だから、言いたいことを殺して作り笑いをする。

それが家庭円満のためだと思っていたけど……。

「でも、今は少し変わったな。能面がはがれたっていうか……自然な顔をしてる」

顔を上げ、こちらを見てふっと笑う博之。

この人、こういう風に優しく笑う人だったんだ……。

「そう……かな」

今は緊張から解き放たれているから、自然な顔になるのかな。

「それなのに、今の旦那さんとうまくいってないんだっけ? どうしてそうなったか聞いてあげるから、ゆっくり話してごらん」

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