××夫婦、溺愛のなれそめ

彼は私をじゅうぶん大事にしてくれている。

なのに、私はどうだ。相変わらず自分勝手で、自分が一番大変だと思いこんで、八つ当たりをして……。

お母さんのことを話すレヴィの寂しげな瞳を思い出す。

「私、帰る」

何やってるんだろう、私。

こんなところにいるべきじゃない。早く家に帰るべきだ。

レヴィが一人で買ったお弁当を食べている姿なんて、見たくない。

だから神藤さんも手作りにこだわっていたんだ。

お母さんのぬくもりを得られずに、それでも曲がらずに頑張ってきたレヴィを、私が裏切ってどうする。

放ったらかしにされて辛い気持ちは、誰より私がよくわかっているはずだったのに。

「そう。もう愚痴はいいの?」

「うん。聞いてくれてありがとう」

博之に聞いてもらったおかげで、自分のいるべき場所に気づくことができた。

「そういえば莉子の今勤めている会社って、浅丘グループなんだよな。とすると、フィアンセは浅丘の御曹司か」

上着を着ていると、博之がそんなことを言いだす。

「誰に聞いたの」

「蛇の道は蛇ってね」
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