××夫婦、溺愛のなれそめ
「ってこれ、いつの間に」
「きみのものだよ、莉子。きみは昨夜、僕のプロポーズを受諾した」
「ちょっと待ってください、覚えてないんです!」
頭がおかしくなりそう。とりあえず、指輪を外して返そうとした。そんな私の手を優しく握る王子様。
「言っただろう。覚えていなくても、拒否することは許さない」
にっこり笑って言う王子様の顔が悪魔に見えた。私、相当ヤバイやつ引いちゃったんじゃ……。
「どうしてそう急いで結婚しようとするんですか。そういえばあなたも、恋人にフラれたばかりなんですよね?それならまず恋愛から始めればいいじゃないですか。どうしていきなり結婚なんて」
王子様の手を振り払い、壁際に後退する私。それをゆっくりと追いつめてくる王子様。
彼は天使のような顔で、信じられないことを言い放つ。
「恋愛期間なんていらないんだよ。僕に必要なのは、結婚だけ」
恋愛期間なんていらない? まあ条件が良ければ恋愛感情がなくたっていいと思うけど、相手を知る期間が全くないなんて、不安じゃないのかな。
「私も、結婚に恋愛感情は必ずしも必要とは思っていません。けれど、あなたは何かに焦っているように見える。強引に結婚しようとする理由を教えてください。理由によっては、協力します」