××夫婦、溺愛のなれそめ
いつもの時間に会社に着き、いつもの秘書室に入った。
「おはようございます」
挨拶をするけど、返事がない。なぜか先に来ていた神藤さんと真由さん、ほかの秘書ひとりが集まってひそひそと内緒話している。
みんな緊迫した表情をしている。何かあったのかな?
「あ、莉子さん。あなたがいるということは」
神藤さんは皆まで言わず、レヴィがいる隣の部屋に走っていく。
その異様な雰囲気に飲まれ、ほかの人と同じように立ち尽くす。
「どうかしたんですか?」
真由さんに向かって訪ねるけど、彼女は難しい表情をしたまま返事をしない。
こんなに緊張したような真由さんの顔、初めて見た。いつも周りを明るくするような笑顔なのに。
よっぽどのことが起きたんだ。そう直感すると、自分の表情も硬くなっていくのを感じる。
そのうちにあと二人の秘書も出勤し、同じように異様な雰囲気に気づいて戸惑っていた。
「あのう、どうかしたの?」
「このままじゃ仕事ができないんですけど……」
二人が訪ねてようやく、真由さんが口を開いた。
「情報が、漏れていたみたいです。新製品の情報が……」