××夫婦、溺愛のなれそめ
「うそ!」
記事をよく読んで驚いた。情報を盗んだと思われる会社は、私の前の勤め先だった。
記事から貼られているリンク先へ飛ぶと、原材料や製造過程までは載っていないものの、先日真由さんがコピーしていた取引先企業に紹介するための資料に酷似したものが載っていた。
「莉子さん。あなた、金曜日に友達と会ったと言っていましたね」
「え、ええ……」
「どこのどなたと会ったのか、詳しく教えていただけませんか」
詰問するような、鋭い目線の神藤さん。
素直に答えようとして、こらえた。
博之は私の元カレ。それだけじゃない。前の勤め先の現役社員だ。
「私を疑っているんですか」
心が急速に冷えていくのを感じる。
「まさか、私が、社内の情報を前の勤め先に売ったとでも言うんですか。夫の会社の情報を」
ひどすぎる。ありえない。私がレヴィを裏切るなんて。
神藤さんをにらむけど、彼がひるむ様子はない。
「ですが、あなたはこの会社に勤めていた。内通していても不思議じゃない」
タブレットをレヴィの机に置き、語気を強める神藤さん。そんな彼をレヴィが諫めた。
「やめろ神藤。莉子がそんなことをするわけない」