××夫婦、溺愛のなれそめ
協力という言葉を聞いて、王子様のヘーゼルの瞳が輝いた。
「ぜひ協力してほしい。実は、とても困っているんだ」
やっぱり。ひと目見た瞬間から私に運命を感じたから結婚したい……とか、そういう理由ではないわけね。
がっかりしながら、どこかでほっとしていた。目に見えない感情より、具体的で納得できる理由が欲しい。
窓際のソファに並んで座り、王子様が話しだした。金茶色の髪が朝の光に透けて、黄金でできた絹糸のように見える。
「僕は浅丘・レヴィ・瑛士」
名字と名前の間にもう一個ある。しかも王子じゃなくてエイジかい。似合わない。
喉から手が出るほど突っ込みたかったけど、寸でのところで堪えた。
「父は浅丘グループの会長で、僕はそのグループ企業のCEO」
「へ⁉」
王子様は真顔でサラッと言ったけど、浅丘グループって言えば、昔の財閥だった巨大グループじゃない。
浅丘グループの会長が外国人と聞いたことはないから、多分お母様が外国の方なんだろう。
「父は厳しい人でね。三十歳までに結婚できなければ、グループから追放すると言われてるんだ。そして僕はもう二十九。誕生日は一週間後。ここできみを逃したら終わりだ」
「ええー! どうしてそんな条件があるんですか」