××夫婦、溺愛のなれそめ
のっそりと自分の席につくも、お互いに無言のまま。
「ねえ。食欲がないのはわかるけど、あなたは食べないと」
私が栄養失調で死のうと、風邪で寝込もうと、誰も困らない。けど、レヴィはいち企業のCEO。今倒れさせるわけにはいかない。
「……きみに説教されたくないよ」
「なんですって?」
「友達と会うと嘘をついて、元カレと会っていた莉子に、説教されたくない」
ぴきき、と私たちの周りの空気が凍り付いていく音を聞いた気がした。
「それは……悪かったわよ」
今それ気にするとき?と思うけど、素直に謝っておく。こじらせるともっと大変なことになりそう。
「開き直った」
ぷいと顔をそむけるレヴィ。
「開き直りって……あのね、彼とは本当に何もないの。ただ海外出張から一時帰国してきたっていうから、最後に顔を合わせておこうと思っただけ」
「顔を合わせてどうするつもりだったの」
めんどくさ。
一瞬吐き捨てそうだったけど、もちろん我慢した。その代わりに、違う我慢が爆発した。
「あなたの陰気な兄上にいじめられてムシャクシャしてたのよ。思いっきり愚痴を言いたかったの! 愚痴って聞く方も疲れるし不愉快でしょ。そういう思いをさせていい相手が彼だったのよ」