××夫婦、溺愛のなれそめ
「父さん、兄さんに言っておいてくださいよ。莉子を虐めたら僕が許さないって。あまり関わらないでくれと」
「はっはっは。親戚なのに関わらないのは無理だろう」
「あの子はどうしてあんなに意地悪なのかしらねえ。瑛士はいい子なのに」
のん気に笑うお父様と、ため息をつくお母様。
いやだからね、何度も言うけどお母様が放置しすぎたせいじゃ……。
性悪義兄は、あの事件のあとも全く私に謝ってこない。
挙句、「疑われるような行動をしたやつが悪い」とレヴィに言い捨てたそうな。
その代り、義兄の奥さんがこの前マンションを訪ねてきた。
『あの人は誰かに意地悪しなくては生きられない可哀想な人なのです。人の上に立つ人がそれではいけないと常々言っているんですけど。本当にごめんなさいね』
そう言って菓子折りを差し出す奥様は、まるで中国の古典に出てくる天女のようだった。
どうしてこんなにいいひとがあの義兄の奥様なのかと、首を傾げずにはいられなかった。
そんなことを思いだしていると、隣に座っていた母が口を開いた。
「瑛士さん、莉子をお願いしますね。私が手をかけてやれなかったぶん、たっぷり愛してください」