××夫婦、溺愛のなれそめ
「いたのか、じゃありませんよ。一緒に会長をお見送りしていたじゃありませんか」
「そうだっけ」
「そうです。さあレヴィ様、乗ってください。本来、こんなことをしている余裕はないんです」
こんなことって。
まだわたしより相応しい妻がレヴィにはいるはずだと思っている神藤さんは、苛立ちを隠せない。
「莉子さんをマンションに送っていき、それから会社に行きましょう」
「どうして。今日は日曜なのに」
「新製品の受注が止まらないからですよ! 休まず働いてください。さあ、さあ」
めでたく例の新製品の発表にこぎ着けたレヴィの会社は、その直後から爆発的に忙しくなった。
ワイドショーが情報漏えい事件を取り上げたおかげかもしれない。
その反対に、相手企業はイメージが悪くなり、受注の数が減っていることだろう。
「納得行かないな。僕の企業は社員を休日出勤させるようなブラック企業ではないはずだ」
「レヴィ様」
「休むときは休む。出勤したら集中して働く。それが正しい社会人のあり方だ。お前が特殊なんだよ、神藤」
休みも終業後の時間もレヴィに尽くしたくて、彼と一緒にいたくて仕方ない神藤さん。
たしかに彼が特殊だ。っていうか、異常よ。