××夫婦、溺愛のなれそめ
「はい、莉子乗って」
レヴィが助手席のドアを開けてくれるから、そこに乗り込んだ。
あれ、いつもレヴィが助手席で、私は後ろの席なのに……と気づいたときには、レヴィが運転席にいた。
「あれ?」
「キーを奪った」
にっといたずらっこみたいに笑うレヴィ。素早く全てのドアをロックした彼の横の窓を、神藤さんが鬼のような顔で叩いている。
「行こう」
「でも、神藤さん……」
ホラー映画みたいに窓にへばりついている神藤さん。怖い、怖いよう。
「大丈夫。逃げろ!」
レヴィがエンジンをかける。その瞬間、神藤さんが身を引いた。へばりついたままじゃ危ないと我に返ったんだろう。
神藤さんが離れた瞬間、レヴィはアクセルを踏んだ。
タイヤが駐車場の砂利を踏み、道路に出ていく。バックミラーを見ると、神藤さんが憤慨した様子でこちらに何か叫んでいた。
うわあ、怒ってるよ。大丈夫なのかなあ。
「どうせ日曜は取引先も休みなんだ。明日頑張れば済むことなのに、神藤は心配性だなあ」
気を揉む私を安心させるように、レヴィが笑う。