××夫婦、溺愛のなれそめ
そんなことを考えていて、ふと思う。元カレは私のそういうところに不満があったのかな。
いいや。終わったことにこだわっていても、何も始まらない。
シンデレラが王子様に拾われたようなものだ。このチャンスを生かして、幸せをつかむんだから。
そうして意気込んだ三十分後、ようやく王子様のお城に到着した。
そこは城と呼ぶにふさわしい高級マンションだった。周囲にも天に届きそうなビルやマンションが群れをなして立ち並んでいる。
車を停めた駐車場には、高級車がずらり。驚いたままエントランスをくぐり、エレベーターに乗り込む。当然のように最上階のボタンを押した王子様。
たどり着いた最上階の突き当り。重厚なドアは網膜認証で開くようになっていた。
まるでスパイ映画みたいだと感心して見ていると、レヴィがドアを開けてくれる。ありがたく中に入り、仰天した。
「わあ!」
玄関マットの上に、知らない男の人が正座でこちらを見上げていた。その人は紺色のスーツで、銀縁のメガネをかけている。黒い髪の毛は丁寧にセットされていた。
「おかえりなさいませ、レヴィさま」
三つ指を立てて深くお辞儀するスーツの人。彼には私など見えていないみたい。レヴィにだけ挨拶をすると、彼は顔を上げた。