××夫婦、溺愛のなれそめ
「神藤……土日は休めって言ってるだろ。どうしてお前がここにいるんだ」
うんざりした顔でレヴィが言うと、神藤と呼ばれたスーツの人がすくっと立ち上がった。
一見おじさんみたいだけど、よく見るとレヴィと同い年くらいで、整った顔立ちをしている。けれど流行からかけ離れた銀縁メガネと撫でつけたような髪型が全てを台無しにしていた。なのに清潔感だけは無駄に漂っている。
「金曜から様子がおかしかったので気になっていたのです。昨日は全く連絡が取れないし、いったいどうしたのかと。心配していました」
そう言うと、神藤さんはキッと私をにらむ。メガネの奥の切れ長の瞳が鋭い光を放った。
「この女性は?」
まるで汚いものでも見るような視線にムッとする。何この人。男のくせに、レヴィの正妻みたい。そして私は運悪く遭遇した不倫相手か。
「僕のフィアンセだ。明日にでも届を出して結婚する」
キッパリそう言うと、レヴィは打って変わって優しい態度で私に説明する。
「莉子、彼は僕の秘書の神藤聖人(マサト)。仕事に熱心すぎるが、悪い人間ではないから。どうか気を悪くしないでほしい」
レヴィは私の手を引き、神藤さんの横をすり抜けて廊下を歩き、ドアを開けた。