××夫婦、溺愛のなれそめ

「荷物はもうまとまってるの?」

「だいたいは」

海外にいくつもりだったから、計画的に片付けはすすめていた。他にもやることは山ほどあるから、土壇場でバタバタしないように。

まあ、それも全部無駄になったんだけど。

「じゃあ、今から運んでしまおうか」

「えっ」

今から? さすがに今すぐに来てくれる業者はいない……と思っているうちに、レヴィがどこかに電話をかけ始める。

二言三言話したあと、彼は携帯を持ったままこちらを見た。

「住所は?」

も、もしや……浅岡グループの力を使い、業者を捕まえた?

携帯を渡され、自分の住所を告げる。

「じゃあ、今から向かうからよろしく。うん、現地集合で。じゃあ」

電話を切ったレヴィがこちらを見て、にっこりと笑った。

「業者確保したから。行こうか」

やっぱり! あんぐりと口を開けてしまう。

彼が浅岡グループの御曹司だということは知っているのに、いきなりその効力を見せつけられて驚いた。

そんな私に、レヴィが携帯を胸ポケットにしまいながら尋ねる。

「どうしたの?」

「いえ、びっくりしたの。今日中に引っ越せるなんて思わなかったから」

慌てて笑顔を作ると、レヴィの表情が陰った。
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