××夫婦、溺愛のなれそめ
「もしかして、結婚の話自体、冗談だとでも思ってる?」
そんなことはない。けど、今さら自分が踏み込んだ世界に戸惑っているのは確かである。
「いいえ。でも、私たち知り合ったばかりだもの。驚くこともあるでしょ。私とあなたの”普通”は違うのよ、きっと」
彼はセレブで、私は一般市民。育ってきた環境が違えば、日常の習慣も常識も食い違って当然。
「あなたこそ、これから驚くかもしれないわよ。私は庶民ですからね。驚くならまだいいけど、がっかりしたり後悔するときも来ると思う」
私はじっとレヴィのヘーゼルの目を見つめた。
『だから、それが嫌なら同じような生まれ育ちのお嬢さんとお見合いして、慎重に相手を決めた方がいい』
そんな親切なことは言ってあげない。だって、そうなったら私が困るんだもの。
ただ、覚悟はしておいてもらわないとね。
「他人同士で同じ場所に住むんだもの。意見の食い違いもあるだろうけど、その都度話し合って穏便にやっていきましょう」
それは、どんな新婚カップルにも言えることだろう。よく聞くじゃない、「結婚前はこんな人だと思わなかった!」ってやつ。新郎新婦お互いに。