××夫婦、溺愛のなれそめ
私たちは相手のことを何も知らない。だから、ぶつかり合うだろうという覚悟ができる。
なまじ、「私たちはお互いを深く理解しあってる」と思いこんで結婚するよりいいかもね。
「……僕は、たとえ莉子が目の前でおならをしようとゲップをしようと、お風呂に二日に一度しか入らない人であろうと、洗濯物を溜めてから洗う人であろうと、気にしない」
目を笑いの形に細め、レヴィはそう言う。
「さすがに目の前でおならやゲップはしないわよ」
思わず声を出して笑ってしまうと、レヴィも緊張が解けたように小さく笑った。
「きみは不思議な人だね、莉子」
「ん?」
「普通、いくら利害が一致していても、いきなり知らない男と住むなんて怖くない?」
今さらの質問に、きょとんとしてしまった。
そりゃあそうだ。普通なら怖い。車に乗れって言われた時点でアウトだ。
「ほんとね」
いくら自暴自棄になってしまう状況だったとしても、それまで世の中を計画的に、かつ冷静に歩んできた私としてはあり得ない行動だ。
「でも、レヴィは大丈夫だと思ったの」
白雪姫もシンデレラも眠り姫も人魚姫も。
みんな、王子様をひとめ見ただけで好きになった。人魚姫は除外しても、他のお姫様はみんなすぐに結婚している。