××夫婦、溺愛のなれそめ
きっと、王子様ってそういう人種なのよ。人を惹きつけてやまない人種。私とは違う。
「莉子は直感を信じる人なんだね」
「ダメ?」
「ううん。悪くない。今まで周りには神藤みたいな石橋を叩きまくって壊しそうな人ばかりだったから。少し驚いているけれど、莉子に大丈夫と思ってもらえてよかった」
そういうとレヴィはすっと立ち上がり、広いリビングを横切って奥のドアから別の部屋へ。
何をしにいったんだろう?
首を傾げて見守っていると、彼はすぐに戻ってきた。その手には、白い紙切れが。
「ならば、サインしてもらえるね」
彼は高そうな万年筆と共に、ダイニングテーブルの上にそれを広げて置く。
ソファから立ち上がり、テーブルに近づく。そこには、皺ひとつない婚姻届が。
この人、本気なんだ。
わかっていたはずなのに、リアルな小道具が出てくると緊張する。
「私も持ってるの。証人の欄も書いてあるから、できればそっちを使いたいんだけど……」
「そう。それならその方がいいね」
うなずいたレヴィに背を向け、自分のバッグを取りに行く。その中のクリアファイルから、私はとっておきの婚姻届けを取りだした。