××夫婦、溺愛のなれそめ

「いいよ。莉子が好きなら、これで」

ひとしきり悩んだあと、レヴィが万年筆のキャップを開ける。

「嫌ならやめていいよ。記念にとっておくから、こっちのスタンダードな方で」

「いいや、こっちにしよう。一度しか出せないんだから」

そう言いながら、眉間に皺寄ってますけど。

「ねえ、レヴィ」

座って婚姻届に向かうレヴィの腕をたたく。

「なんだい。今集中しているから、邪魔しないでくれたまえ」

なにその喋りかた。おかしいの。

「私たち、結婚するのよね?」

「そうだよ」

「じゃあ、無理はしないほうがいいわ。譲歩するのも大事だけど、本当に嫌なことは嫌だって言っていいの」

万年筆を持ったまま、レヴィがこちらを見上げた。心底驚いたという顔で。見開かれたヘーゼルの瞳の中、ブラウンの部分に光が当たって、ひまわりが咲いているように見える。
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