××夫婦、溺愛のなれそめ
「……そうか」
独り言のように呟くと、レヴィはふっと笑う。
「大丈夫だよ、僕も緊張しているだけ……」
言いかけたところで、廊下に続く出入口のドアが開いた。
「会長のアポ、取れました。明日の夜です」
こっちの状況など気にしないで再び現れた神藤さんは、テーブルの上の婚姻届けを見て固まった。
「これ……ちゃんと役所に出せるんですか?」
レヴィと同じ反応をするから、私は思わず吹き出した。つられるようにレヴィも吹き出す。
顔を見合わせて笑うと、まるで彼のことを前から知っているような不思議な感覚を覚えた。
神藤さんだけが、置いてけぼりにされたような、のけ者にそれたような、苦々しい顔をしていた。
このあと、レヴィと私のマンションに向かい、引っ越しに取りかかった。
現れた引っ越し業者はプロ中のプロで、あっと言う間に私の荷物をまとめてしまった。
必要なくなった家具は、レヴィの持っている倉庫にひとまず運ぶことに。
こうして私はその日のうちにレヴィのマンションに引っ越し、空いている部屋を与えられた。
こうして、王子様との同居が始まった。