××夫婦、溺愛のなれそめ

「……そうか」

独り言のように呟くと、レヴィはふっと笑う。

「大丈夫だよ、僕も緊張しているだけ……」

言いかけたところで、廊下に続く出入口のドアが開いた。

「会長のアポ、取れました。明日の夜です」

こっちの状況など気にしないで再び現れた神藤さんは、テーブルの上の婚姻届けを見て固まった。

「これ……ちゃんと役所に出せるんですか?」

レヴィと同じ反応をするから、私は思わず吹き出した。つられるようにレヴィも吹き出す。

顔を見合わせて笑うと、まるで彼のことを前から知っているような不思議な感覚を覚えた。

神藤さんだけが、置いてけぼりにされたような、のけ者にそれたような、苦々しい顔をしていた。


このあと、レヴィと私のマンションに向かい、引っ越しに取りかかった。

現れた引っ越し業者はプロ中のプロで、あっと言う間に私の荷物をまとめてしまった。

必要なくなった家具は、レヴィの持っている倉庫にひとまず運ぶことに。

こうして私はその日のうちにレヴィのマンションに引っ越し、空いている部屋を与えられた。

こうして、王子様との同居が始まった。


< 34 / 200 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop