××夫婦、溺愛のなれそめ
ムカついた私は、完璧な笑顔を作って明朗な声で言ってやった。
「いいえ、大丈夫です。他に結婚してくれる人がいますから。私もいつ別れを切りだそうかと思っていたんです」
後半は明らかに嘘だった。それが雰囲気で伝わったのか、そんなわけはないと思うのか。
部長は「ええ~っ」と大げさに驚き、女性社員たちは笑いをこらえるように肩を震わせていた。
「見栄はらなくてもいいのにね」
「本当だとしたら、とんでもない尻軽女だよな」
どこからかそんな声が聞こえてきた。
見栄はってるわけじゃない。本当に結婚するんだもん。それも、元カレよりスペックの高い相手と。
別に出てくれなくていいけど、結婚式の招待状は送ってやる。相手の名前をネット検索して仰天するがいい。
ただ私の胸をチクリと刺したのは、「尻軽」の二文字だった。
レヴィも心のどこかで、そう思っているのかな……。
自分でもそう思わないことはない。二股をかけるとか、男の人をとっかえひっかえとか、会ってすぐ抱かれちゃうなんて、今までではありえなかったことだ。
でも、レヴィは特別。
どうしてかわからないけど、彼のことを逃がしてはいけないと、本能が叫んだんだ。あの空港のベンチで。