××夫婦、溺愛のなれそめ

だけど、心配顔の由香はこうたずねてくる。

「次の相手がもういるって言ってるんだって? 大丈夫? 変な男に引っかかる前に、実家に帰るのよ。今の年齢だったらいくらでもやりなおせる。ヤケになっちゃダメ」

ええー。たった半日でそこまで噂が広まっているのか。黙っていた意味ないじゃん。

っていうか、みんな暇なの? ここ会社だよ。仕事しようよ。って、社内恋愛で退職する気満々だった私が言えたことじゃないけどさ。

「ありがとう。心配しないで」

レヴィがもしも変態的な性癖を持っていたり、実は殺人犯だったりしたらさすがにひくかもな。そうしたら、由香の言う通り実家に帰ってイチからやり直そう。

実家って言っても、都内だしそんなに居心地のいい実家じゃないけど。

陰口たたくばかりじゃなくて、心配してくれる人もいる。それがわかっただけでも良かった。

「じゃあね」

ホチキス留めまでしてくれる印刷機で出来上がった資料をそのまま抱えて先に部屋を出ていく。

「落ち着いたら連絡して。飲みに行こうよ。待ってるから」

由香の声に振り向き、笑顔でうなずいた。

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